宗達と桔梗


複写転載;大和文華館名品図録1995 
俵屋宗達による桔梗・ききょう。銀泥で描かれた花弁は、垂らし込みの表出をみせて、たゆたゆと
おおらかに温雅です。そして、薄(ススキ)の弧は、伸びやかに、まさしくストローク、そして、光悦
肥痩の運筆との妙には感嘆するのみ。しかし、桔梗の姿は、驚くほどに忠実な写生です。
歌は、「わすれしな灘波の秋の夜半の空ことうらにすむつきはみるとも」。
慶長11年11月11日の年月と光悦の印がある色紙が現在16枚、どうせなら11枚か111枚。
銀泥は、硫化し黒変しており、本来の銀を想像するのも妙。
しかし、宗達は、銀が黒に変容するのを、つまりグラデュエイトするのを楽しんでいたのではないか!
おそらく、いぶし銀のようになった時が一番美しく輝いていたのではないかと推測したい。
また、黒変した銀の存在感や、墨や金との差異による美を予知し熟知していたのではないかと
想像はふくらむ。



秋の花と思いきや、7月には満開の様相。あざやかな青紫。まさしく桔梗色
この桔梗色の艶やかな美しさには開眼させられる。