武将茶人・上田宗箇の世界展


「ウツクシキ」を掲げる美意識をもつ、戦国武将の大胆な箆(ヘラ)や鉈(なた)による強靭な創作や
造形に会いに行く。同時代の織部唐津、美濃、伊賀など優品も多く展示されており堪能と眼福。


釘抜き紋が絶妙な黒織部茶碗。箆(ヘラ)で釉薬を剥いだ平らな菱形の面に、透明釉をかけ焼成
この菱形の幾何形を、釘抜き紋とよぶとは!この二つの構成やバランスにも驚きの気配。山道も美しい。
山道(山路)は、茶碗の口縁部の起伏が山なみのような凹凸した形状をいう。

臙脂色(えんじいろ)の胴には、箆(ヘラ)による雄渾な削りが施された宗箇手造りの茶碗。剛直だ!
内側は、3本ほどの指先による横溝が走り、外とは対象的な手の温もりが印象的。
解説には「本阿弥光悦と同様に、独自の個性が明確に凝縮され傑出しており、入魂の一作」とある

竹花生。いさぎよく鉈(なた)を振り下ろし、渾身の迫力がたぎる、みごとな一重切りの花生け。
四本の竹花生がならぶ展示空間は壮観。素材としての竹の素晴らしさを再認識させられる。

茶杓(ちゃしゃく)はスプーンであり、興味つきないのだが、上田宗箇の剛直な茶杓には驚喜。
中節の蟻腰(ありごし)は明確な強さがあり、櫂先(かいさき)は、直立にちかく折曲げた折撓(おりため)。
利休や織部と並べて数本の展示は、見応え充分。
88歳まで生きた上田宗箇(1569年〜1650年)は、当時としては驚くべき長寿で、自ら二十日間食を絶って
息を止める。そして、遺言により遺骨は鉄槌で粉砕され海に流されたという