ほおずき・北斎・鏡面美人図


前回のブログ・雛人形の艶やかに開けた唇を見て、葛飾北斎の肉筆浮世絵「鏡面美人図」を思い出した。
ホオズキを口にくわえた興味深い仕草と造形だ。お歯黒の歯、そして下唇が緑色なのは、
高価な紅を厚く重ねると、玉虫色に輝き、光によって緑色に見え、「笹色紅」と言われた当時の流行。
ホオズキの実は、内をくり抜き、口のなかで歯と舌を微妙に使って笛のように鳴らす。
なんとも可憐な音色で、テクニックが必要。しかし、緑と赤とお歯黒との形や配色はナントモ魅惑的でコケティッシュだ。

手鏡に写した表情で眉や髪の生え際の繊細さ、この小指の仕草の表現もニクイ!


絹に描かれた肉筆で、襟の白は、裏側に赤色で着色され、正面からは、淡いピンクに見える。
着物や帯の模様も異色なのだが、おそらく粋の極みなのでしょう。
ホオズキ「鬼灯」と書き、江戸の風物詩として、浅草などの「ほおずき市」も有名で、
赤く丸い実は、子供の笛にもなり江戸で愛されたのでしょう。
かって、ホオズキのジャムを頂いたことがあり、美味でしたね〜。
残念ながら、海外はボストン美術館のコレクションです。

葛飾北斎「鏡面美人図」 絹に着彩 文化2年(1805年)135,5 X 57,5 cm ボストン美術館