「版画芸術」2012年冬号・日本の現代版画

特集・日本の現代版画1968-1992
1974年制作 STROKES74-15 が掲載されました。

38年前の作品であり、時代の経過には感慨深い。


1974年    原 健 
 リトグラフによる<ストロークス>のシリーズは、1974年の個展から始まる。それまで、形態の並列や、
繰り返しによる無焦点の<ノーフォーカス>シリーズや、単なる暈しではなく、相対する色彩のもとで
総合浸透する暫時的移行の<グラデュエーション>シリーズを制作していた。
この<ストロークス>では、言葉の意味する「腕の一振り」や「筆勢」、「鼓動」など身体的な身振りや
心音を意識し、描く行為にも思いをはせている。
かって、インク練台の上で遊びながら、偶然にローラーボカシの手法を発見したのは 1968年であった。
木製や重い鉄ローラーに代わり、軽いアルミ製のローラーが出現し、長さも自由に発注できると知り
驚喜したのを思い出す。
網点の分解や吹付けによるのではなく、インクそのものが相互に浸透するローラーボカシによる
諧調表現には魅了され、のめり込みながら展開してきた。