扇面形向付

この春に、月に一度、開かれる古市で、なにげなく入手した志野焼きですが、
まさかとは思うけれど、日がたつにつれ、古いものかもと悩ましくなっている「シロモノ・白もの」

見込みには、葦文、意外にも、繊細に描かれた穂先。葦の葉が風に揺れなびく姿は、
「揺らぎ」が主題であり、神が影向(ようごう)する依代(よりしろ)とされている。
笹や竹の葉のゆらぎ、枝垂れる柳、蔦、松などにも、同じ意があるらしい。

側面には、川辺の蛇籠らしき籠文。まごうことなき蛇籠(じゃかご)だ。

この側面の文様意匠は不明だが、橋の欄干か!あるいは垣根らしくにも見えるし
関東の「ミチキリ」、関西では「勧請縄(かんしょうなわ)」と呼ばれる吊し(つるし)飾り
かも知れない。
乳白色の長石釉が厚くかかり、口縁部には緋色がでている。
美濃の大萱地区にある牟田洞窯に類似した陶片が見られるようだ。
しかし。なんだか粗野な扇形で、描かれた文様も稚拙のようでもあるけれど、
扇面形に、それぞれ聖性らしき文様モチーフが、描かれており
いろいろと学習させられた「シロモノ」。