雨雲と時雨など名碗


絢爛たる桃山の文化.特に慶長年間にそそられる私には魅惑的なタイトルの美術展だ。
建築、調度、屏風、南蛮、聖龕(せいがん)、蒔絵など、豪華潤蘭。そして陶器へと―
志野・織部美濃焼織部の席巻」として、地元ならではの優品がオンパレード。


へうげもの古田織部の屋敷跡からの出土品が、まとめて並べられ凝視させられる。

破格で「傾き(かぶき)」な織部焼きの造形がならび。
最後に、「長次郎から光悦へ」として、いずれも、周囲360度、どこからでも眺められる
名碗が6口も。
それぞれ高名な優品であり、一同に並び比較できるとは、
特に、光悦の「時雨」と「雨雲」が据えられており至福、感涙ものです。

長次郎・作 黒楽茶碗 銘「大黒」千利休・旧蔵 
楽焼半筒茶碗の名品

長次郎・作 赤楽茶碗 銘「無一物」 頴川美術館(西宮市)・蔵

志野茶碗 銘「広沢」 湯木美術館(大阪市)・蔵

織部菊文茶碗 個人・蔵
これを見ると、いつも 菊なのかな〜!と。まさしく「へうげた(おどけた)菊」だ。
三角の窓空間は、沖縄の 「斎場(セーファ)御瀧・三庫理(さんぐぅい)」にも見へてしまう。
三角岩などの傾斜角度が、相似ですねー!


本阿弥光悦・作 黒楽茶碗 銘「雨雲」 三井記念美術館・蔵
魅了され続けている造り。一度、畳の上におかれた状態を見てみたい。
タテに鋭い走りもみせる漆黒の雨雲と切り立つ絶壁な口縁、
そして、畳のヨコに走る井草の目とは、絶の妙ではないかと

本阿弥光悦・作 黒楽茶碗 銘「時雨」 名古屋市博物館・蔵
やはり、口縁部の、潔い切り口は、媚びていない。高台脇からの脹らみと相まって、かすかに反り返り、
断ち切られる口縁は、見事に研ぎ澄まされており、名刀に通じるものが漲(みなぎ)る。
埋まるように、極限までに低い高台も、言わずもがな!
図版転載;変革のとき「桃山」展覧会図録2010年より