黒根来・黒漆絵瓶子


酒を入れた神饌の器ですが、この肩から胴、そして基台部への、ふくらみある曲線の素晴らしさ。
黒漆の上に朱漆を施した「根来瓶子」が知られるが、これは、それより時代は古いとされる黒漆瓶子で、
朱漆で松がのびやかに描かれている。サイズは、高31,5 x 胴径21,5cm。
時代は、室町前期か、かなり修復されており亀裂や陥没、断文、後塗りや補筆など散見されるが、
時代を経た堂々たる容姿や風格は損なわれず、存在感は抜群で詠嘆。一見、不安定そうな造形ですが、
日本の木地挽物はスゴく、中ほどより下はムクで、半分上のみ空洞となっており安定している。

バックには、7年前の原健作品「HT-0507」2005年制作[ボードに楮和紙・油彩 50X28,5cm ]を配しました。
タイトルのHTは「HITO(人)」の略です。

肩には、宝袋の紋様が三か所に描かれて、注口の内側には、ミゴトな鮮やかさで朱漆が残っている。
朱漆で描かれた宝袋の線は、ところどころ剥がれて、黒漆が鮮やかに覗き、これまた絶妙です。

右は、東京国立博物館・蔵の「松竹漆絵瓶子南北朝時代14世紀・高31,5 x 胴径21,5cm
サイズは、まったくの同一で、形態の膨らみや、まろやかさなど類似しており驚いている。

垂涎ものの朱漆の根来瓶子。

かって、根来の朱漆を求めて紀州根来寺を訪ねたおり、伝わる唯一の根来塗りと教えられた聖天堂の修法壇。