静嘉堂美術館その3 揺れる網干し文様 銘・うたたね

揺れる網干し文様
織部の魅惑的な文様を発見し凝視させられる。「うたたね」の銘にも魅惑的で引き付けられる!

織部茶碗 銘「うたたね」17世紀・桃山時代 9,7x10,4cm
漆黒の黒釉を掛け外してできた三角の窓に鉄絵文様(鬼板と呼ばれる鉄絵具)を施し、長石釉がかけられる。

網干し風の文様が描かれているとあるが、この筆勢や運筆はミゴトで驚くほどの軽妙な筆技だ。
この時代、いろいろと描かれている網干し文様だが、これは秀逸。風になびいているようにも見える。
揺れなびく姿は、「揺らぎ」が主題であり、神が影向(ようごう)する依代(よりしろ)とされている。


網干し文様は、漁用の網を浜に干した情景を描いたもので、竿にかけた網の三角形の意匠など散見される。
籠や蛇籠など、の籠目文様と同じく、斜め格子の文様は、鬼が恐れ邪気を祓う霊力があるといわれた。
また、彼岸と此岸の境界とする浜辺に立つ姿から神の依代とも見なされていた。

反対側の面は、黒釉に書き落としで三角繋ぎの図像が描かれる。
銘の「うたたね」は、この三角繋ぎの意匠を、午睡する漁師に見立てたものとのことだが、造形的に魅惑される。
参照;画像転載―「静嘉堂の茶道具・茶碗」発行:静嘉堂美術館